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SS作風比較研究企画 『Kaleido/m@ster』(カレイドマスター) 参加作品 byトリスケ

 最近アイマスSS界隈も企画がたくさん出てきていまして盛り上がっていますね
 そんな中、今回また一つの企画に参加させていただきました

 SS作風比較研究企画 『Kaleido/m@ster』(カレイドマスター)
 http://garciap.blog93.fc2.com/blog-entry-139.html

 ガルシアP主催の企画で、詳しいことは企画ページをみていただければと思いますが
 簡単に説明しますと 簡単な台本がありまして それに各執筆者が自分なりの作品を
仕上げていくという企画で

 なかなか考える企画で参加して苦労しましたが、これからもこういう企画には積極的に
 参加したいものです

 
 『近いから……』 

都内某所の多少ガタが来ているダンスレッスンスタジオ内。
 そのスタジオに備え付けてある何の変哲のない大きな鏡が、レッスン場の汚さに似つかわしくない輝く二人の人物を映し出していた。
 芸能プロである765プロ所属のアイドル、天海春香と如月千早。
 今日は学校が土曜で休みということもあり、朝から二人は熱心にダンスレッスンに打ち込んでいた。
 ジャージ姿の二人が動くたびに板張りの床が軋み、安いカセットデッキから流れる音楽とハーモニーを奏でる。
 彼女達のファンがこの場にいたなら、たとえジャージ姿でも、歌ではなく床の軋む音でも立派なコンサートに見えていただろう。
 途中までは、無難にコンサートを続けていたのだが……
「わ、わわっ!」
 悲鳴と共に、床が抜けのではないかという位見事に春香が床に頭から転んだ。
 こういう風景も、春香のファンなら喜んで応援や喜びの拍手を送るのだが、今春香の隣にいるのは彼女のファンではない。
「春香、今日はダンスレッスンの仕上げのはずよ」
 千早は、カセットデッキの停止ボタンを押した後、少し赤くなった額をさする春香を見て、今日何度目か数えるのを放棄したため息をつく。
「えへへ。ゴメンね、千早ちゃん。もう1回、いいかな?」
 そのもう1回も何度目かしら?と千早は心の中でつぶやかざるを得ないほど今日の春香のレッスンの出来はひどかった。 
 とりあえず春香のドジな部分は今に始まった事ではないが、それにしても今日はいつにもまして春香の動きが悪かった。
 春香の才能というべきだろうか。いつもの春香なら転んでもどういう訳だか怪我一つせずにけろりとしているのだが、今日はこうやって軽いとはいえ打ち身等の怪我を量産していた。
 怪我の程度自体は本当に心配する程のものではないが、春香が転んで怪我をするという事態がある意味異常事態であった。
「なんで昨日より動きが悪いの?」
 千早はいくつかの理由で焦っていた。
 一番の大きな理由は、このダンスレッスンが仕上がれば来週からは千早にとって生きがいともいうべき歌のレッスンを彼女達のプロデューサーにとりつけているからだ。
 当然、仕上がればという条件があるので春香がこんな状態ではとても歌のレッスンに移らせてくれとは言えない。
 それに本当にこんな状態が続けば、いずれ大怪我にもつながってレッスンどころではなくなってしまう。 
 よくも悪くも完璧主義のある千早は、遅々として進まないスケジュールを思い返してもう一度ため息をつく。
 春香も、千早がどれだけ来週からの歌のレッスンを楽しみにしているかを知っているので、自分が足を引っ張っているという事実にしょげかえるしかなかった。
 すぐに立ち上がろうとしない春香の姿を見て、千早の心の堤防が少し切れた。
「あなたにはプロ意識が足りないのよ!」
 堤防から漏れた怒りの感情が、ストレートに声に現れる。
 千早の剣幕に、春香の表情が悲しみと驚きが混ざった複雑なものになる。
 一気に感情を爆発させた反動で、冷静になった千早は後悔に包まれた。
 すぐに失敗を取り戻そうもせず、ただ落ち込むだけの春香に非も少しあったかもしれないが、自分が怒った根本にある理由が自分の都合だけを考えた物であるということを千早は恥じた。
 春香が怪我をするという事実より、レッスンが出来なくなるという事を心配している自分を千早は責める。
 悲しみに包まれる春香を直視すればするほど、自分勝手な自分が許せなくなる。
 千早は、春香から半ば逃げるようにレッスン場を飛び出した。
 そんな千早を引き止める術や気力を、春香は持ち合わせていなかった。

 あてもなくレッスン場を飛び出した千早は、少し離れた公園のベンチに座り、レッスン場でついたものと違う種類の大きなため息をついた。
 考えれば考えるほど、自責の念に潰されそうになる。
 気持ちの重さに潰されるかのように、千早はうつむいた。
 目を瞑り、気持ちを落ち着けようするが、浮かんでくるのは春香の顔だけ。
 何も考えないようにと、千早は人の少ない公園の静けさに集中した。
 だが、それを許さない……というわけではなく、聴きなれた大きな声が静けさを千早の領域からおいやった。
「あ、いた! 千早さーん」
 自分を呼ぶ声に千早は顔をあげた。
 顔をあげた先にいたのは、同じく765プロ所属の星井美希だった。
 美希は小走りに手を振りながら千早の方に向かってくる。
 千早が何か言おうとする前に、美希は千早の隣にその走ってくる勢いのままぴょんと千早の隣に座った。
「千早さん今日はレッスン午前だけで、午後フリーだよね?」
 美希は、落ち込んでいる千早の表情など伺うなどという素振りすら見せずに、笑顔で千早の服の裾を引っ張る。
「お昼食べに行こう! 美希ねー、千早さんの為に美味しいお蕎麦屋さん調べて来たの!」
 唐突な美希の誘いであったが、千早には思い当たる節があった。
 先日、とあるトーク番組の話題で最近興味あることは?という質問を受けて、その時に歌以外でという番組側からの注文があったので、春香がダイエットに蕎麦がいいのかなと言っていたのを思い出し、とりあえず蕎麦に興味あると言った事を思い出した。
 もっとも、本当に興味があるわけではなく、春香が言っていたから覚えていただけの話なのだが。
 そしてその事実を思い出した時、千早は一つの違和感に気付いた。
 たしかに、その番組で蕎麦の話題はした。
 だが、番組で言っただけでその番組自体はまた放映されたわけではないのだ。
 そして、もう一つ。
 美希に、今日の午後がフリーだという事も一言も言った覚えがない。
 と、なると……犯人は。
「美希……その話、誰から聞いたの? 私の今日のスケジュールは?」
 千早は、美希の肩をがしっと掴んで真剣な目で美希を見つめる。
 突然のことに、美希は一瞬判断に困りほかんと口を開けたままになるが、千早の勢いに押されて『犯人』を口にした。

 レッスン場に、派手に転ぶ音が何度も響き渡っていた。
 響き渡るのはその転倒音だけで、後は何も聞こえてこない。
 春香は倒れても倒れても、歯を食いしばって立ち上がる。
 何度もそうしているうちに意思と反して足が動かなくなり、流した汗に足を取られ派手に転倒した。
 床に突っ伏した春香の耳に、時計の電子音が12時を知らせる。
 孤独なレッスンがほぼ1時間たったことになる。
 レッスンの辛さより床を鳴らす足音が一つだという事実が春香にとってよほど辛く、床を濡らす汗に涙が混じった。
 自分が頑張れるのはそう……
 床を見つめたまま、一人の人物を思い浮かべる。
 そんな春香の思考を遮るように、レッスン場の扉が開く音がした。
「明け方まで長電話なんて、ダメじゃない」
 その声の方を床にはいつくばったまま見上げると、まさに今脳裏に思い浮かべていた人物……千早がいた。
 千早は怖い顔で怒りが収まっていないことは一目瞭然であったが、どんな顔であっても春香は千早の顔が見られただけで嬉しい。
 そして、嬉しいと思うからこそ悲しいという事実もある。
「今日はダンスレッスンだって知ってたのよね?」
「だって、美希が千早さん、千早さんって嬉しそうにしゃべるから……」
 半泣きのまま、声を詰まらせて春香が千早に訴える。
 千早と二人でいられるのが嬉しいからこそ、他の人と千早が一緒に仲良くいる時間が悲しくて泣きたくなる。
 自分勝手な独占欲だとわかっていてもどうしようもない。
「私だって……」
 思いの丈を全てぶつけたいのに、春香は後の言葉が続けられない。
 だが、言葉を続けられなくても千早は春香の心を感じ取り、千早の心臓の鼓動がドキリ跳ね上がる。

 そう、春香の望みはささやかな望み。
 そして、自分の望みは……

「今日の午後のオフ、無しだから」
「え?」
 多分赤くなっているだろう自分の顔を見られたくない千早は、春香を見ないようにしながらそっけなく言う。
「今日中にダンスレッスン仕上げるの。16時から、レッスン再開よ」
 千早はポケットから携帯を取り出し、春香に画面を見せた。
 そこには『予約できた。OK、頑張れ』という短いメールが映っている。
 宛先はプロデューサーからだった。
 そのメールの内容と、横を向いて照れている千早を見て春香は泣き顔のまま笑顔になる。
 「そうだよね。へへ。私、頑張んなきゃ!」
 春香はジャージの裾でごしごしと涙を拭き取ると、自然と元気が出てきたのか多少ふらつきながらも立ち上がり、元気さをアピールするかのようにガッツポーズをとった。
 病は気からというが、心の病にはこういう栄養剤が最適なのだろう。
「16時にはプロデューサーも来るわ。それまでは、自由時間よ」
 春香の心の切り替えの早さに、呆れていいものは感心していいものか半分に迷いつつ、携帯をいれていたポケットと別のポケットから一つの鍵を取り出し春香に手渡す。
 手渡す瞬間、春香の手が触れて千早の心臓の鼓動はさらに活動を早めた。
「このフロアのミーティングルームB室、16時まで使えるわ」
 その心臓の激しい鼓動に逆らうように、ごくごく冷静に千早は事実のみを伝えた。
 春香の方は、そんな千早の心境も言葉の意味もわからずにきょとんと千早を見つめる 
「仮眠しなさい。3時間でも眠れば、ずっと楽になるから」
 これ以上この場にいると、心の中を全て春香に見透かされそうに思えて、千早はそれだけを伝えると春香に背中を向けてレッスン場を後にしようとする。 
 千早にしてみれば、春香の顔を今まともにみたら何をいうかわかったものではなかった。
 自分の気持ちも、春香の気持ちもわかっているのに千早は素直になれない。
 出口に向けて歩き出した千早だったが、その望みは適うことはなかった。
 春香が力強く、千早のジャージの裾を握っている。
「えっとね、千早ちゃん……」
 裾を掴んだままで、春香はうつむいている。
 それ以上の言葉なくても、もう千早には春香の手から伝わる鼓動で何を言いたいのか理解した。
 たとえそれが錯覚だとしても、千早は春香に贈る言葉は一つしか思い浮かばなかった。
「……隣にいるから、いい夢みなさい」

テーマ : アイドルマスター
ジャンル : ゲーム

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