スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

一時間SS(ふるぷら)/お気に入り

 今週は私も参加してみましたー。
 これ終わったら動画作るんだ…… まだ4分くらいしか出来てないし。
 その口紅は、お母様のオススメ。
 ちょっとセンスが古い気がするけど、私のお気に入り。

・・・・・・・
・・・・


 ミュージカルは初挑戦だから、私もかなり気合が入っていた。
 もちろんヒロイン役! 叶わぬ恋に身を焦がすお姫様!
 は、いいんだけど……
「伊織! ……ちょっと伊織!!」
私の恋する騎士様は、なんで……
「朝早いからってボーッとしてないでよ! 気合入れる!!」
「うひゃあ! 何するのよ!!」
ペチン!と私のおでこを叩いた彼…… じゃない彼女がよりにもよって騎士様役の菊地真。
 ミュージカルの公演まで期日があまりない。集合して練習する機会も限られている。ならばと始めた早朝レッスンだけど……
 なんでこいつ、こんなに元気なのかしら。
『あぁ エリーゼ姫。もうこうしてお逢いする機会も無いでしょう。私は遠い戦地へ向かいます。』
小さな公園のベンチの上から、騎士様然として歌うようにセリフを喋る真。流石に様になっているけど……
『あぁウィード様、私はいつまでも待っています。貴方が戦地から帰り、私を連れ去ってくれる日を……』
私も負けずに声を出す。ステージの上ではドレスを着ているハズ、そう思って体を動かす。
 朝の肌寒い空気。空はどんより曇っている。今にも泣き出しそうな空……
『天の神々と先祖に誓いましょう。私はなんとしてでも手柄を立て、貴女を正々堂々と向えに来ると!』
あぁ、騎士様役がイケメンな男の人だったらもっと盛り上がるんだろうけど…… 少なくとも私の気持ちは盛り上がっていない。そりゃあ、チケットの売れ行きはいいらしいし、真の騎士役を見たいファンは多い(主に女性ファン)らしいから興行的には問題無いみたいだけど。
『いいえ、手柄なぞ要りません! 貴方が、貴方様が無事に帰ってきてくれるなら!!』
問題なのはキスシーンがあることだ。だからこそ相手が真になった、みたいなところはあるんだけど、台本を渡され、ドキドキして相手役が決まるのを待った日々のトキメキをどうしてくれるのかしら!
『今の私は貴女とつり合うものではありません。東方の蛮族を打ち倒し、手柄を立てて……』
ぽつり、ぽつり。空はレッスンが終わるのを待つことなく、大粒の涙を流し始めた。すぐに雨は服に染み込み、せっかく決めた髪を崩していく。けど……
『誰に憚ることなく! 貴女を迎えます!! 我が生涯の伴侶として!!』
ベンチに立っている真の、騎士様の顔を見上げた。一瞬の稲光が逆光になって、真剣な表情で見つめ返してくるその顔に……
『ウィード様…… 』
その先のセリフが出てこなかった。1分、2分、私は動けずにそのまま騎士様の顔を見上げていた。
「……伊織!! セリフ!!」
「あっ! ご、ごめんっ!」
騎士様が急に、いつもの真の顔に戻った。
「……とりあえずそこの遊具の中に逃げよう」
私の手を取り、真は走り出した。その仕草がまさに騎士然としていて…… ち、違うの! テレてるわけじゃないし、そもそもこんなの好きじゃない! 好きじゃ……

・・・・・・・
・・・・


『今の私は貴女とつり合うものではありません。東方の蛮族を打ち倒し、手柄を立てて……』
ステージの上、鎧を着た(もちろん作り物だけど)真が、馬上(のように見える舞台装置)の上から声を張り上げる。
 会場からは黄色い声。客の7割は女性みたい。
『誰に憚ることなく! 貴女を迎えます!! 我が生涯の伴侶として!!』
私は、騎士様を見上げるお姫様。だけど、だけど…… 次のセリフが出て来ないっ!
 認めたくはないけど、真に見とれていた。実際、銀の鎧に剣を下げて、真剣にプロポーズの言葉を告げる真は、もうどこを見ても…… 理想の騎士様。
(伊織っ 伊織っ! セリフ!!)
小さな声が聴こえてくる。表情を変えず、なるべく口を動かさないようにして囁く声。急速に我に返った。
『ウィード様! お待ちしております! どうか、どうかご無事で!!』
なんとかセリフを言うことができた。そして騎士様が馬から降りると、私の手を取って抱き寄せる。黄色い声には羨望と、多分嫉妬が混じっている。見詰め合う2人。
『ご無礼を…… ですが、我が誓いの証として』
兜を跳ね上げ、短い髪まで跳ね上がる。ステージのライトを背に受けて、騎士様の顔は逆光。あの稲光の時と同じ……
『え、えぇ…… 私の騎士様……』
ライトが暗くなっていく。唇を重ねた男女を隠すように、一旦幕が閉じる。拍手と声援と若干の悲鳴。
(伊織?)
いつまでも動かなかった私を心配そうに見つめる顔は、いつもの真。
(ばかっ 早く放してよっ!)
(ご、ごめん……)
飛び上がるように真の腕の中から離れた。……そして気付いた。唇に感じた確かな感触。
(あ、あんた本当にキ……)
信じられない! 寸止めでいいハズなのにっ!
(だって、実際にしないとダメだって監督さんに……)
申し訳無さそうな顔の真。そしてもう一つ気付いた。
(唇!! 早く拭いてきなさい! まだ劇は続くんだから!!)
(えぇ!? わ、わかった!)
お気に入りの口紅が、真の唇に移っていた。……確かに、したんだ。

・・・・・・・
・・・・


 その口紅は、お母様のオススメ。
 ちょっとセンスが古い気がするけど、私のお気に入り。
 いつか大好きな男性が現れたら、その口紅をつけてデートしないさい。
 そんなことを言われた。
 お気に入りだったから、実際そうするつもりでもいた。
 私の大事な大事なお気に入り。

・・・・・・・
・・・・


 歓声が鳴り止まない。
 拍手と口笛と賞賛の声。
 幕が閉まってからもしばらく続いた。
「伊織…… ごめん!」
騎士の姿のまま、真が頭を下げる。
「あ、謝って済む話じゃないのよ! わ、私の……」
「私の?」
「言わせないでよバカ!!」
どうしてこんなに腹が立つんだろう。ファーストキスだったとしても、相手は女なんだし、そんなに腹を立てる必要は……
「参ったなぁ…… まだ公演もあるし…… 許してよ伊織ぃ」
善良で生真面目な騎士様。台本の設定の通りの真の困った顔を見ていたら、なんだかどんどん、怒りが消えていった。
「う、上手くやってよね! ……クライマックスシーンだし、あんたがリードするべきシーンなんだから!!」
「わ、わかったよ伊織! ……そういえば、今日の口紅、凄く似合ってるね。」
頬が紅潮するのがわかった。
「よ、よよよよよ余計なこと言わなくていいの!! さっさと着替えるわよっ!!」

・・・・・・・
・・・・


 その口紅は、お母様のオススメ。
 ちょっとセンスが古い気がするけど、私のお気に入り。
 ファーストキスはこの口紅と決めていた。
 ……ちょっとかわったファーストキスだけど、後悔なんかしていない。
 今は、私の騎士様の為に、この口紅をつけよう。
 ミュージカルが終わるまで、私はお姫様なのだから……

テーマ : アイドルマスター
ジャンル : ゲーム

コメントの投稿

非公開コメント

拝読しました

初めまして。作品拝読させてもらいました。
とっても雰囲気のあるいおまこですね!騎士と姫っていうとゆきまこのイメージがありますけど、伊織でも当てはまるんですね。
天然な真と素直じゃない伊織は見ていてくすぐったくなりますw素敵な作品でした!

No title

えらっしゃーです
雪歩だと深窓の令嬢みたいな感じの正統派なお姫様になりますが
まぁ伊織だとおてんば姫ができますからなw
その気はないの女の子にモテる真ってのは大好きなネタなので

感想ありがとうでしたー
プロフィール

トリスケリオンP&ふるぷら~んP

Author:トリスケリオンP&ふるぷら~んP
主にニコニコでアイマスMAD作成中
結構適当

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
リンク集
ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。