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第三回一枚絵で書いてみm@ster作品/『桜頼り』 byトリスケ

さて、第三回になりました一枚絵で書いてみm@ster参加作品です
今回は自分が大ファンであるコミズミコさんの絵ということで
ターボブーストかけながらやってます


もう一作品仕上がればいいなぁ  ・・・前回もそんなこといってた気がするけど
誰もいない深夜の桜の下に、憂いを帯びた少女二人が身じろぎもせず座り込んでいた。
 薄暗い街灯ので照らされた桜と少女の対比は、芸術作品を思わせる程の美しさではあったが、当の芸術作品である本人達の心は美しさと程遠い所にあった。
一枚絵で書いてみm@ster-3

「桜の下には……なんて話はありきたりすぎるわね」
 手に持った紙コップの中身を少しだけ口に含んだ後、秋月律子は隣に座る如月千早に向かってぽつりと呟く。
「そうね、物語の題材としても、歌の題材としてもありきたりになるかしら」
 そんな話に関心はないという事をアピールするかのように、千早は無表情でその呟きに答えた。
 その会話は、この桜の木の下で交わされた最初の会話だった。
 
「正直、私、何やってるのかしらね」
「私に聞かれても困るわ」
「……そんな態度だから、春香にも千早は冷たいって言われるのよ」
「春香は甘えすぎなのよ……そして今日の律子は律子らしくないわ」

 そんな事位は解ってる、と律子は心の声を喉から出すのを途中でやめた。
 『そんな事位』だからこそ、千早ならきっと理解している。
 理解してるからこそ、あえて問いかけたのだと。
 理解していない、律子自身のために。

「自惚れていたわけじゃないけど、なんでも自分一人でできるなんて思っていたわ」
 律子は、コップの中身に自分の顔を映す。
 小さな水面には、誰かを……いや、自分を嘲笑う自分がいた。
「そういうのを、自惚れって言うと思うのだけど」
 千早は目を閉じながら、あっさり律子の言葉を否定する。
 優しい言葉など一切期待していなかったが、あまりにも思った通りの答えが返ってきたので律子はお決まりの通りにため息をつく。
「私に対して優しくしろなんていわないけど、本当に他の人に対しては気をつけないと世の中渡っていけないわよ」
 そう言って、律子はもう一度深くため息をついた。
「ため息をつくと、幸せが逃げるっていうわよ?」
「……千早に似つかわしくないセリフね」
 横目で千早を見る律子。
 千早は変わらず目を閉じていて、美しい桜や自嘲する律子など眼中にいれようとしなかった。

「春香が言ってたのよ」
「そうだと思った」
 またため息。
「ほら、また逃げた」
「今更逃げる幸せなんてないわよ」
「そうかしら?」
「ため息で、他人に幸せを返せたらいいのだけどね。残ってないけど」
 律子は首を後ろに倒し、夜空と桜を視界いっぱいに入れた。
 その言葉に、千早は目を開け律子の方を向いた。
「誰に返すといいたいのかしら?」
「解ってることいわせるのは、無駄なやり取りだと思わない?」
 律子は、千早をみていない。
 いや、見たくないのだ。


 そう、解ってる……
 律子も、千早も。


「調子に乗りすぎていたのよ。ファンの受けがいいからとか、私はみんなに信頼されてるとか、色々とね。少し考えれば子供だってわかることをあの時、考えもしなかった」
 右手に力が入り、律子の手に握られていた紙コップがぐしゃりとつぶれる。
 中に入っていた水が律子の手を、履いていたズボンを濡らすが一向に気にするそぶりを見せない。
 ただ上を見上げて、過去を振り返る律子に今の自分がどうかなんてことは他人事でしかなかった。
「プロデューサーは止めたのに、私が勝手に暴走して……」
 目を瞑り涙がこぼれないようにするが、律子の目からは自然と涙がこぼれる。
「なら……それに乗った私も同罪ね」
 そんな律子と対照的に、いたって平静な顔で千早は答える。
「千早にあの計画は一言も話してなかったわよ。すべて私の独断で進めたこと。私は千早の夢の階段を壊したのよ」
「律子らしくないわよ、一回の失敗で落ち込むなんて」
「千早も変わったわね。昔の千早ならあんな酷いライブになったら、それこそ落ち込む所の騒ぎじゃないと思うんだけど?」
「朱に交われば……かしらね」
 千早なりの冗談なのかもしれないが、そんなセリフを笑いもせずに言う。
「まったく、誰のせいかしらね」
 千早との出会い、千早と律子を取り巻く数多くの仲間との思い出が律子の中で走馬灯のように巡っている。
 千早が変わったように――多分いい方向に――自分はきっと変われなった。
 律子の抱いていてた野望は現実という壁の高さを知って、もう変われない、もう登れないという結論をはじき出した。
 一人で何もできるなんてという子供じみた甘い考えをあっさり否定され、人は誰かを頼らないと生きていけないという当たり前のフレーズを何故か律子は否定したい。
 それは律子の中にあるお高いプライド……
 そのプライドもいとも簡単に破壊されて、残されたのは卑小なプライドのみ。
 
「結局、私はプロデューサーにも、千早にも……他のみんなに頼りっぱなしね。たまに『律子さんは頼りになります』っていわれて有頂天になってたわ」
「……私が律子を頼りにしてるといった事も、お世辞だと思ってるわけ?」
「そうじゃないわね、ただ私も千早も……いやみんなも買いかぶってただけよ」
 律子は片手を後ろに回し、もたれていた桜の木をゆっくり撫でる。
「結局最後はみんなに頼りっきりで、みんなの役になんて立ててなかった。雪歩じゃないけどこの桜の木の下にでも埋まりたい気分よ」
「……萩原さんだって、今の律子のように逃げようとはしないわね」
 あくまで千早は冷たい。
 その冷たさに込められた意味を律子は知っている。
 ――対等な間柄だかこそ、安い同情はしない
 律子を認めてるからこそ、千早は心を隠さないでありのままの自分をぶつけてくる。
 そんな扱いを受けるほどたいした人物じゃない自分に向けて、だ。

「正直、もうアイドルを続けていくのはきついわね。まぁすべての元凶は私なんだし……。千早はこれからソロでも行けるでしょ?何か押し付けるようで悪いけど」
 千早に向けての言葉を紡ぎながらも、伝えるべき相手の千早を一切みない。
 これは律子のヒトリゴト――遺言かもしれない――だからだ。
「引退するとでも?」
「引退でもいいけど……本当にこの桜の下に埋まってもいいかな?」
 律子は愛しそうに桜を何度も撫でる。
「アイドルとしての秋月律子はお終い。今後はこの桜の養分になって、この桜を綺麗にしてみんなを笑顔にするの……」
「本当にらしくないわね、自分で言ってて恥ずかしくないのかしら?」
「それこそ聞かないでよ」
 笑顔などまったく見せなかった律子の表情に、苦笑だが初めて笑顔が浮かんだ。
 千早はゆっくり立ち上がり、律子の方に歩き出す。
 桜を見上げたまま自分の方を見ない律子を見下ろし、律子をまっすぐに見据える。
「律子、頭を冷やしなさい」
 千早はゆっくりと手にもっていた紙コップを傾け、少しだけぬるくなっていた水を律子の泣き顔に向けて注いだ。
 その水を律子は避けもせず、そのまま受ける。
「冷たいわよ、千早」
 怒るそぶりさえみせない律子。
「誰かに頼って生きる人生が嫌、律子はそういいたいのよね」
「まぁ現実的には無理……そんなのは解ってるわよ」
 今日何度目になるか数えるのも馬鹿らしくなる位のため息がまた律子の口からこぼれた。 
 顔にかかった水が数滴、律子のため息をついた口に入り込み律子の喉を潤す。
「仮に律子がこの桜の埋まって人生から引退しようと考えても……結局律子は最後まで頼ることになるのよ」
「……どういうことよ」
 閉じていた目を開いて、律子は千早と視線をあわせる。
 眼鏡のレンズが水浸しで、よくは見えなかったが……

「桜の養分になろうなんて……結局最後は桜に頼ろうとしてるのよ、律子は。最後の最後まで結局頼りきりの人生になるわね」
 よく見えないレンズ越しでも、千早の表情が厳しいこと位は解る。
「……何か色々言いたいけど、うまく否定できないのが悔しいわね」
「いつもの律子なら、すぐにでも反論したと思うのだけど?」
「本当に千早、あんたは変わったわよ」
 律子が今もらしたため息は、今日何度も漏らしたため息とは所属が違い、飽きれたという部署に所属するため息だった。
 そのため息からは、幸せは逃げてはいない。
「私を変えた責任の一旦は、律子、あなたにもあるんだから最後まで責任とるべきだと思うわよ」
 そういって千早は、少しだけ笑った。
「結局、どう足掻いたって何かに頼らないと生きていけないわけか」

 解っている事を……あえて口にする。
 解っていない、自分に言い聞かせるように。

「ま、桜はきっと私なんか頼りにしないだろうから……せいぜい足掻いて、私なんかを頼りにしようとする物好きを探すとしますか」
 小さく拳を握り、気合を入れる律子。
 そんな律子に、千早はハンカチを差し出した。
「私だって、頼りにしてるし……律子に頼られたいのよ。桜なんか頼らずに、私を頼ってくれていいのよ」
「……本当に似合わないわよ、千早」
「……今日のらしくない律子だって、珍しかったわよ」

 桜の美しさも霞む、美しいも明るしい笑顔がそこにあった。

テーマ : アイドルマスター
ジャンル : ゲーム

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非公開コメント

拝読致しました

風景と人物との対比、登場人物である律子さんと千早さんとの対比、
その対比が素晴らしいと思います。
時間を追うにそって、自信をつけた律子と、いい意味で自信をなくした千早。
このSSにおいては、ちょうど二人が同じような人物像をもち、お互いがお互いのことを理解できる、だからこそ生まれたストーリーだと思います。素直じゃないけれど叱咤激励しあう友人、律子と千早はこういう関係であってほしいですね。
素晴らしいSSをありがとうございました!

結局は

一人で生きているわけじゃあない、何せ世界は自分と他人で出来ている。
だからこそ誰にも頼らずに、むしろ自分が頼られるくらいの立場でありたいと
思った律子の挫折と、その向こう側からもう一度立てと願う千早の、瞬間の
瑞々しさが綺麗に描かれてますね。
ありのままをあるがままに、礫のように投げる千早の言葉の重み、それを正面から
しっかり受け止める律子の覚悟。相互の信頼関係があればこそでしょう。

拝読させて頂きました

千早と律子、二人の頼り頼られ、の関係性がいいですね。
「桜の養分になる」と言った時の律子を見て、もしかしたら千早は
律子から頼られる桜が少し羨ましかったんじゃないかなーとも思いました。
最後のシーンで、冒頭にはなかった笑顔が見られて良かったです。
この先の二人を応援したくなりました。

いい2人。

やっぱり律子と千早の組み合わせはいいなぁ、と実感。
このくらいの距離感の2人がとても好きです。
客観的で、理論的で、時に皮肉めいていて、
たまに論理が飛躍するけど、自信満々で言い切って。
キャラの魅力、存分に描かれていて魅力的でした。

「……何か色々言いたいけど、うまく否定できないのが悔しいわね」
ここ、読みながらシンクロしました。

拝読しました

これは素晴らしいりつちはでした。

自分はカプ物はくっつける事しか頭にないので、こういう絶妙な距離を保ったまま話を進めて行く事がまだ出来ないので、いい勉強になります。

素晴らしいSSありがとうございましたm(_ _)m

感想ありがとうございました

みなさん感想ありがとうございました
返信の方遅れてすみませんorz

小六さん>
律子と千早って案外似たもの同士なのに両極端という感じで
案外面白い関係だなと思うんですよ どっちも案外クールなのに
どこかお人よしというか 仲間意識を人一倍大切にする
一番色んな意味で御互いを解ってる関係なのかもです

微熱体温さん>
律子は自分に案外自信がもてないタイプだからこそ、何か挫折を
味わうと一人じゃ立ち直れない 一人で何かしたいと思ってもそれが
出来なくてもがくけど それでも仲間がいてくれる素晴らしさをきちんと
理解できる聡明さがあると思います その聡明さを千早は千早の聡明さで
理解してるからこその関係 なのだと思います

寓話さん>
千早にとって、律子もいなくてはいけないパートナーですらね
桜が美しかろうが、見て欲しいのは自分を含めての765プロのパートナー
律子からもっともっと養分もらいたい 律子に養分を与えたい そんな関係ですかね

ガルシアP>
二人とも、頭のいいキャラという共通点や素直じゃないという共通点といった処があり
二人の距離っ案外測り辛い部分はありますね でも離れてからだめじゃなくて
ある程度離れてるからこそ見える関係なんですよね 近すぎないから見えるものを
伝えられる関係 それがこの二人ですかね

春P>
アイドルの関係としては 色々くっついていちゃいちゃというのもいいんですけど
やはりこういう緊張感ある関係もいいのかなと思います 仲のよさも色々ありますからね



みなさまありがとうございました

No title

 自分の書いてから読もうと思ってたんで遅くなっちまった

 というわけで読みましたー
 ……つかなんだ ほんと、同じ絵を見て作ったSSかってくらいやはり人それぞれで印象って変わるもんですわな
 つかなんだ 自分はひねくれてる気もしないでもないし……

 こういう切れ味のある会話は、アイマスのアイドルだとこの2人でしか成立せんわ
 お互いを認めてるけどもどこか冷めた視線で
 頼りあってるけど近付きすぎず……
(なんつーか ドス持って斬り合いしてるような感じの会話だな とか思ったさな)

 企画運営お疲れですわ
 次回も参加させてもらうますな~ 

No title

ふP>
律子と千早ってやっぱ 765プロの中でも知的トップ2だと思うのよ
結構取り乱したりもするけど基本冷静だからこその二人
この二人以外にこういう会話させるとなると何か違和感でてくるからねぇ


……この絵であれだけのストーリーがでてくるのがこの企画の醍醐味だからね
プロフィール

トリスケリオンP&ふるぷら~んP

Author:トリスケリオンP&ふるぷら~んP
主にニコニコでアイマスMAD作成中
結構適当

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