スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

一時間SS/『覆水盆に返らず』

はい、一枚絵で書いてみm@ser苦戦してます
その中で金曜日恒例 一時間SSです

今回も雪歩話っす  一時間は雪歩話がデフォなるかもなぁと


今回のテーマで使ったのは、『氷』『動物』『プライド』です
 ファンの歓声が背中越しに響いている……
 これが萩原雪歩の聞く最後の、彼女に向けての歓声になるのだろう。
 彼女の……挫折したアイドルへの最後の……ささやかな手向け

「最後の最後まで、私、ダメダメでしたね……」
 静かな控え室に、引退ライブを行った雪歩と、彼女のプロデューサーだけが残された。
 Dランクで終わった彼女のアイドルの人生。
 肝心な所で躓き、上を目指すことすらできなかった。
 わずかなプライドさえも、上に上っていく他のアイドルと自分の実力の差を見せつけられた瞬間、薄いガラスの様に砕かれた。
 弱い自分が嫌いだから、なんとかしがみついてでもこの世界にいたかった。
 だが現実は残酷で、動物の世界が弱肉強食であるように、アイドルの世界も弱肉強食の世界だった。
 雪歩は食われたのだ……現実という魔物に。
 
「雪歩、決意は固いのか?」
 うなだれる雪歩に向かって、プロデューサーは問う。
「はい、こんな私じゃ……やっぱりだめなんです」
 雪歩の目から涙がこぼれる。悲しみの涙なのか、悔し涙なのかは当人にもわかっていないのだろう。
「俺はまだまだ引退には早いと思っていた。今日の引退ライブも区切りとしては認めたが……俺は雪歩の復帰プランも考えているんだ」
 プロデューサーとしても、志半ばで挫折した雪歩に対して責任を感じている。
 責任以上に感じているのは、目の前の原石が今は鈍い光すら放っていなくても、必ずもっともっと磨けば光り輝けるという期待だ。
 雪歩には、もっともっとゆっくりと自分の花を咲かせて欲しかった。
 美しいくも儚い花は簡単に手折られてしまうけど、なんどでも生えて欲しい。
 雪歩には、美しさと共に雑草のような強さもあるのだが、そこにプロデューサーは賭けていた。
「プロデューサーには、本当にお世話になり……ました」
 涙声の雪歩の声は、震えて、掠れて、プロデューサーの耳にでなく、胸に響く。
「……あの時の失敗以来だよな、雪歩が引退を考えたのは」
 指示を取り違え、大事なオーディションを取りこぼした時の事を思い出す。
 そのオーディション以来、雪歩はそれを引きずり一度もオーディションに勝てなくなってしまった。
 プロデューサーは自分の無能さを心で罵ったが、雪歩はプロデューサーを責めず自分を責めた。
 そして、逆も然りだ……

 テーブルにおいてある飲み物の氷が少し溶けて、静かな部屋にカランという音を響かせる。

「やり直しは、できるんだぞ?」
「だめですよ、あんな失敗をしてしまった私なんか……もう誰も」
「失敗したのは俺……」
「私の責任なんですっ!」
 下を向いたまま、涙声のまま、雪歩はあらん限りの力で叫ぶ。

 ……沈黙が流れた。

「すみません……大声だしちゃって」
「少し、すっきりしたんじゃないか?」
 プロデューサーは、雪歩の顔を起こさせ涙を拭いてやる。
「はい、大声出すなんて初めてかもしれません」
「感情をぶつけるのは、いいストレス解消法さ」
 雪歩を安心させてやるために、プロデューサーは笑顔を見せる。
 雪歩も、ちょっとだけ笑顔になった。
「でも、やっぱり失敗ばかりの私はもうここにはいられないと思います」
 先ほどの、涙で弱弱しくすがるようだった雪歩でなく、決意の表情であらためて自分の意思を雪歩は告げた。
「失敗ねぇ……」
 プロデューサーは、テーブルのコップに目を向けた。
「雪歩、『覆水盆に返らず』って言葉は知ってるか?」
「はい……一度起こったことはもう元に戻せない……ですよね」
 その言葉を聞いて、プロデューサーはテーブルの上のコップを手に取った。
 そして……ゆっくりコップを傾ける。
 当然中の飲み物は床に零れ、解けかけていた氷が床で砕けた。
「ぷ、プロデューサー?」
 突然の奇怪な行動に、あっけにとられる雪歩。
「ま、覆水ってのはこういうことだよな」
 そんな雪歩を見ても平然とするプロデューサー。
「さて、ここで質問だ。雪歩ならこの後どうする?」
 空になったコップを弄びながら、にやりとする。
 突然の奇怪な行動、突然の意味不明な質問に雪歩の頭はイメージカラーと同じように真っ白になるが、なんとか現実の色を取り戻しプロデューサーの質問の意味に――普通に考えれば常識的な質問に――答える。
「も、もちろんまず床を拭いて……」
「俺は喉が渇いているんだ、でもジュースがない。どうする?」
「えっ、それならまたジュースを注げば……」
 そう答えて雪歩は、プロデューサーが何を言いたいかおぼろげながら理解する
「そう、単純なことなんだよ。覆水うんぬんは確かに一度やらかしたことは元にもどらねえなんて偉そうにいってやがるが、元に戻す必要なんてねぇんだよ」
 プロデューサーは、コップをテーブルに戻して雪歩の肩に手を置く。
「零しちまったら、床を拭いて新しいジュースをもってくりゃ済むことだ。アイドル業だって単純に考えちまうんだよ、雪歩」
「プロデューサー……」
「失敗したら、それを拭き取ればいい。失った光なら、また注ぎなおして新しいアイドルを……みんなの前に差し出してやろうじゃないか。前よりうまい、萩原雪歩ジュース……いや雪歩的にいうなら、零した古い雪歩茶じゃなく新しい雪歩茶をみんなに振舞ってやろうぜ」
 長いセリフを一気にまくし立てて、喉の渇きを覚えたプロデューサーは雪歩の分のジュースに手をかけ、一息に飲み干す。

「……お茶には、自信ありますから」
 プロデューサーの話を聞き終えた雪歩が、ぽつりともらした後、自分の決意が揺らいだ証拠を見せるように……くすりと笑った。
「まぁ新製品なんて簡単には出せないだろうが……振舞ってやろうぜ、雪歩の歌でしか潤えない奴がいるんだからな」
「……苦いお茶の味、覚えましたから……今日までの失敗で。明日からは…甘いお茶が飲めるようになりたいです」
 雪歩は立ち上がり、控え室の扉に向かって歩き出した。
「ああ、俺も苦いのは苦手だからな……ビールよりカクテル派だ」
 プロデューサーも立ちあがった。

 とりあえず、床に零したジュースを拭き取るために。

テーマ : アイドルマスター
ジャンル : ゲーム

コメントの投稿

非公開コメント

雪歩ったら、もう・・・

ガンバレ。雪歩、ガンバレ。
苦いお茶、甘いお茶の表現は良いですね。
比喩としても上手いし、雪歩っぽいです。
雪歩には、ポジティブなプロデューサーが必須ですね。
何度でも、挑戦してほしいです。目指せトップアイドル。

おおう

零れた水は拭けばいい。失くした水は注げばいい。
ただそれだけのことじゃないか、と雪歩に説いてみせる
描写は、そのままPの心内への言い聞かせなのでしょうね。
躓いても立ち上がる二人に、幸多かれ。

No title

おつかれさまでした、読ませていただきました^^
読後はなんかただただ、
雪歩がんばれ、
Pもがんばれ、
そんな気持ちになりました。
やっぱり引退関連の話は切ないですね…でも、次こそはとがんばる姿勢に胸熱くなる思いに。
素敵な作品をありがとうございます^^

No title

ガルシアP>
雪歩といえばお茶ですからね お茶の表現一つとってもいろんな
事を表現できるから こんどそういうSSにも挑戦してみたいですね
雪歩が只管お茶について語るSSとか

微熱体温さん>
うちの雪歩Pはなんか、当たり前のことを当たり前にいってのけるタイプなんです
雪歩が色々くじけても 当たり前のように立たせる 自分も立ち上がれないときは
雪歩に立たせてもらう そんな関係です

coroさん>
引退は避けて通れない話題ですけど 復活はあっていいと思うんですよね
彼女達はまだ若いからこそ なんどでも立ち上がって 傍には彼がいる
そんな感じで

一時間運営毎回お疲れ様ですー
プロフィール

トリスケリオンP&ふるぷら~んP

Author:トリスケリオンP&ふるぷら~んP
主にニコニコでアイマスMAD作成中
結構適当

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
リンク集
ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。