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SS「空と大地と海と」

気分転換にちと書いてみました
これ書いているとき色々考えていました・・・
 空はとても高かった。
 その高い空には、天使が地上に向けて聖なる歌を合唱していた。
 私も、その歌に憧れ、地上から空を眺めていた。
 だけど、私には翼はなかった。
 天に昇る階段を上る術も知らなかった。

「ごめんなさい、プロデューサー」
「雪歩が謝ることじゃないさ、あれは俺の指示ミスだ」
 車を運転しながら、ちらりとプロデューサーは私の方を心配してみてくれる。
 そのプロデューサーの優しさは、とても貴重で嬉しかったけど、同時にこんなダメな私にそこまで優しくしてくれて申し訳ないという気持ちもいっぱいだった。
 萩原雪歩、16歳。
 私は、アイドルをやっていますが、まだ世間一般では認知度が低いDランクだったりします。
 プロデューサーのフォローもあり、Eランクは卒業できたけど、オーディションにもなかなか受からず、ずっとこのランクをうろうろしていたりします。
「……これで、三連敗ですよね」
「気にするな、先は長い。焦ると余計悪循環になるぞ」
 なんで、この人は怒ってくれないのだろうか。
 私が失敗しても、雪歩はがんばってるんだからきっと大丈夫さと言ってくれる。
 その言葉を信じて、私は地下に潜っていても、空を見上げる事をやめなかった。
 それでも……
 窓から流れる景色は綺麗だ。
 私は、こんな空をいつも見上げていた。
 暗い穴の底からでも、空は明るかったから。そこに憧れたから……
「っと、着いたぞ」
 考え事をしているうちに事務所に着いていた。
「社長に報告しないと、ですね」
「ああ、それはやっておくから雪歩はゆっくり休んでな。今日も疲れただろうし」
 なんで、こんなダメダメな私なのに……この人は。
 そんな事を考えていると、プロデューサーにおいていかれそうになり、慌てて事務所に入る。
「おかえりなさい」
事務所に入ると、事務員の音無小鳥さんが笑顔で迎えてくれる。
正直、この素敵な笑顔は、私よりよっぽどアイドルとして通用するのではないか、とたまに思う。
「ただいま戻りました。あ、小鳥さん、俺は早速社長室にいくので雪歩に何か飲み物出してやってくれませんか?」
「はい、わかりました。雪歩ちゃん、いつものお茶よね」
「あっ、すみません、小鳥さん」
「いいのいいの、雪歩ちゃん頑張っているんだからきちんと休まないとね」
 私は、好意に甘えて隣の控え室でお茶を待つことにした。
 765プロのみんなは、本当に優しい。
 プロデューサーや、小鳥さんだけではない。
 他の仲間のアイドルも、社長も、みんな優しくしてくれる。
 だからこそ、嫌になるときがある。
 こんな、地面を這いずり回るような私なんかに……と思うと。
 ふと、ついていたテレビに目をやると、ちょうど歌番組が流れていた。
 「あ、千早ちゃんだ」
 その番組には、同じ765プロのアイドルである如月千早ちゃんが出演していた。
 いまや、歌姫として押しも押されぬ人気者となっている千早ちゃん。
 テレビから流れる歌声は、私とは比べ物にならない、心を魅了する響きがあった。
 そして、その歌う千早ちゃんからは、輝きがはっきりと見える。
 どちらも、今の自分には手に入らない物だ。
 歌番組が終わり、CMが流れる。
 「今度は、春香ちゃんだ」
 清涼飲料水を片手に、にこやかに画面に映る春香ちゃんは、事務所でみるいつもの危なっかしさはなく、一人の、ファンを魅了するオーラを纏った正真正銘のアイドルだった。
 「みんな、頑張ってるなぁ」
 他のアイドルも、順調に仕事を増やし頑張ってるのを耳にする。
 だから、それを見上げるだけの私は、みんなが羨ましかった。
 そして、そんなみんなを羨ましいと思ってしまう自分が嫌いだった。
 みんな頑張って結果を出している。
 同じく頑張っているって言われていても……結果がでていない私。
 他のみんなと比べると、自分の存在がとても卑小に思えてきて、気付いたら涙がでていた。
「あ、あれ」
 誰かが部屋に入ってくる前に、涙を止めようとした。
 だけど、涙は蛇口が壊れたように、溢れ出て止まってくれない。
 そして、そんなタイミングで、部屋の扉が開いた。
「雪歩、お茶入ったから……ってどうしたっ!?」
 部屋に入ってきたのはプロデューサーだった。
「す、すみませんっ。な、なんでもないんですっ」
 必死で涙を止めようとするけど、逆にプロデューサーの顔をみたら余計に止まらなくなってしまった。
 そんな私をみて、プロデューサーは何も言わず私の向かい側に座った。
 どの位泣いただろうか。
 涙で霞んだ目をこすり、だまって待ってくれたプロデューサーを見る。
「落ち着いたか、雪歩」
「は、はい……すみません」
 こんな泣き顔を見せて、情けない気持ちでいっぱいだったけど、プロデューサーはいつもの、私が安心する落ち着いた笑顔を見せてくれる。
「何があったか、話せるかい」
「……私、アイドルをやってていいんでしょうか」
 涙腺が壊れたと思っていたら、今度は心の扉の鍵が壊れていたようで、真っ先にこの言葉が唇からこぼれた。
「何をいってるんだ、雪歩」
プロデューサーの表情が少し険しくなった。
当然だ、私はプロデューサーの期待を裏切ろうとしているんだから。
「みんな、私が頑張ってくれるといってくれています。でも、それじゃだめなんです」
 一度堰を切った言葉は止まらない。
「結果がでない、どんなにがんばっても上にあがれないダメな私なんかにみんな優しくしてくれて……こんないくらやってもダメな人間がアイドルなんて」
 再び涙が溢れ出て、私はうつむいた。プロデューサーの顔をまともに見られないからだ。
 だけど、プロデューサーは、私の頬を両手で挟み前を向かせる。
「雪歩、お前はどこをみているんだ?」
「えっ」
 涙で半分みえないが、プロデューサーの目は怒っていた。
 声を荒げたりはしなかったけど、始めてみるプロデューサーの怒りの表情だった。
 怒るのも当たり前だよね……
「雪歩、お前は上を目指して空を見上げてばかりだな。……俺も上を目指せといったから悪いのかもしれないが」
「そんな、プロデューサーが悪いなんて」
「雪歩、一つ質問していいか?」
プロデューサーが、まっすぐ私を見据えてくる。
有無をいわせに迫力に、私は小さく頷くしかなかった。
「お前は今、自分がダメでアイドルをやる資格がないっていったな」
「……はい」
「なら雪歩、お前は言えるか?同じようにDランクで頑張っている他のアイドルに、お前はダメだからアイドルをやめちまえって」
「そんなっ、そんなこといえません!」
 そんな、そんな必死で頑張ってる人達にそんなこといえるわけが……
「お前が、自分の事をダメといってるのはな、同じように頑張ってる人を侮辱してる事なんだよ」
 決して、プロデューサーは暴力を振るわなかった。
 けど鋭い言葉は、心を抉るように私を傷つける。
 そして、プロデューサーも傷ついているのだろう。
「そんな、そんな他のみんなは……」
「同じだよ、低ランクだからって存在しちゃいけないなんて他に言えないなら、自分がダメだなんていう資格はないんだよ」
「プロデューサー……」
「上ばかりみるな、もっと地面を踏みしめて周りを見ろ。空ばかりが美しいわけじゃないだろ?大地だって海だって綺麗だろう?」
 その言葉と共に、私の心の中に、草木が生い茂る緑の大地が。陽の光を乱反射して輝く海が現れた。
 なんでだろう……
 優雅に歌える場所が、空だけだなんて思っていたのは。
 空では天使が歌っていて、神々しいステージがあるけど、大地と海でだってこんな素晴らしいステージがあるのを見て見ぬ振りをしていたのだ。
「もし、空で歌いたいなら、飛ぶ必要なんてないんだ。お前らしく、まず地面に潜って、そこでしっかり根を張って、大きな木になってその上で歌えばいいじゃないか」
「大きな木に、ですか」
「そうだな、その木にリンゴでも生えていれば上で歌ってる奴も降りてくるだろ」
「そうしたら、そこで一緒に歌えますね」
泣き顔のままだったけど、自然と笑みがこぼれた。
「ああ、どこでだって歌えるんだ。歌い疲れるまで歌って、それで歌えなくなったら休めばいいさ。その時まで、いや、その後も俺は隣にいてやるさ」
「はい、一緒に歩いて、一緒に、木登りしましょうね」

テーマ : アイドルマスター
ジャンル : ゲーム

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Author:トリスケリオンP&ふるぷら~んP
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